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バレエ、愛、音楽 大型文化プロジェクト「ロシアの季節」を振り返って
2017年、ロシアは初めて大型プロジェクト「ロシアの季節」を日本で展開し、1年間にわたって日本の人々にロシア文化の世界を紹介した。スプートニクは文化イベントの詳細をおい、ロシア人アーティストらにインタビューをとりつづけ、熱心な読者の皆様に参加を促して、そのお礼にイベント賞品をプレゼントした。今年も終わりを迎える今、日本で展開された主なロシア文化活動を振り返ってみたい。
1. ボリショイバレエの海外公演
2017年は、ボリショイバレエにとっては日本公演を開始して60周年という節目の年にあたり、同バレエ団はこれを日本でロシアバレエのスターのスヴェトラーナ・ザハロワとデニス・ロヂキンを交えて祝った。

6月4日、日本公演が東京文化会館での『ジゼル』で幕を開けた。客席には安倍首相の姿もあり、幕が下りると、首相は観客と共に立ち上がり、ダンサーらに惜しみない拍手を送った。終演後、デニス・ロヂキン氏は多くの出待ちファンにサインを求められ、長く劇場に留まった。一方、プリマバレリーナのスヴェトラーナ・ザハロワ氏とその配偶者でバイオリン奏者のワジム・レーピン氏は安倍総理との面会に招待された。
ボリショイバレエは東京、広島、大阪、大津、仙台を回り、同バレエ団の誇る『ジゼル』、『白鳥の湖』、『パリの炎』をかけ、日本の観客はこれを心行くまで堪能した。
ボリショイバレエの日本公演の開始はちょうど、ロシア文化を外国で広く紹介する大型プロジェクト「ロシアの季節」の開幕と重なったため、アーティストらの期待と興奮はなおさら高まった。外国公演は初めてというボリショイバレエの若いダンサーらがこれにむけてどのように準備を行っていたかについては、どうぞこの記事をお読みください。

ボリショイバレエのスター、デニス・ロヂキン氏はスプートニクからの独占インタビューに答えた中で、これだけ大掛かりな規模での出演に、正直いって不安は大きかったと語っている。
このような大規模なセレモニーには全く参加したことがない上、これは国際的な意義を持ったイベントです。当然、出演前は不安でしたが、それは心地よいものでした。なぜなら、今これは、ボリショイ劇場の名誉ですらなく、国全体の名誉だとわかっていたからです。そのため私にとって出演は不安にさせるものでしたが、同時に、私のキャリアでこんなことが起きて、私がまだ活発に踊っているときに日本に「ロシアの季節」が降って湧いたことは、非常に自尊心をくすぐるものでした。非常に光栄でした。
デニス・ロヂキン氏
ロヂキン氏は日本への愛情、ダンサーという職業の難しさ、人気についてについてスプートニクの読者に語ってくれた。インタビュー記事はこちらからお読みいただけます。
2.ニコライ・ツィスカリーゼによる公開マスタークラス
7月、名バレエダンサーで、今やワガノワ記念バレエアカデミーの校長を務めるニコライ・ツィスカリーゼ氏が来日。ツィスカリーゼ氏はアカデミーの生徒も交えたクラシックバレエの公開レッスンを催し、参加希望者を募った。
東京新国立劇場でバレエ『人形の精』を演じる。基本的に、私たちのマスタークラスのプログラムで、私たちの子供たちと一緒に練習することを日本人は非常に好む。私がレッスンを行い、レッスン場には様々な資格を持つ日本の教育者が立ち会う。私たちの国ではユニークな教育メソッドが考案された。ワガノワメソッドだ。
ニコライ・ツィスカリーゼ氏
ワガノワ記念バレエアカデミーの生徒たちはガラコンサート『アステラス』に出演した。これには毎年、海外のバレエ団で活躍する日本のバレエダンサーらも出演している。スプートニクは『アステラス』の舞台裏でモスクワ国際バレエコンクールで優勝した大川航矢さんにマイクを向け、ロシアでの生活やロシアバレエの特徴などを語っていただいた。大川さんへの独占インタビューはこちらからお読みいただけます。
来日前にツィスカリーゼ氏はスプートニクの記者らと会った席で、スプートニクと「ロシアの季節」の合同開催のフォトコンテストでの優勝者に贈るサインを手渡してくれていた。
3.トランス=シベリア芸術祭
秋に行われたイベントで一層の光を放ったのが「トランス=シベリア芸術祭」の日本公演だった。この芸術祭を仕立て上げ、率いているのは世界的に有名なロシア人ヴァイオリン奏者のワジム・レーピン氏。レーピン氏は妻でバレリーナのスヴェトラーナ・ザハロワ氏とともに、昨年の日本公演で大きな評判をさらった『パ・ド・ドゥ for Toes and Fingers』にさらに磨きをかけた新たなバージョンを披露した。
「スヴェトラーナ・ザハロワとのこの共演プロジェクト『パ・ド・ドゥfor Toes and Fingers』は、数年前から存在していますが、非常に特別なものです。なぜならすべての参加者を集め、私とスヴェトラーナのスケジュールを合わせるのはとても難しいからです。『パ・ド・ドゥfor Toes and Fingers』を上演するために全員が集まれるのは年に2回から3回です。このプロジェクトには毎回なんらかの新たな要素が加えられています。スヴェトラーナに新たな演目を上演したいという願望が生まれたりするのです。なおそれは私をさらに惹きつける作品です。ですからこの演目は常に少しずつ発展しています。昨年はトランス=シベリア芸術祭の一環として東京で公演を行い、とても珍しいものだったのでソーシャルメディアが爆発しました。ですから、このプロジェクトをもう一度というたくさんの要望により、私たちは1,5バージョンで2回目の公演をすることにしたのです。いつもよりもたくさんの変化があり、今回は私の演奏には新たな作品が、スヴェトラーナ側からは新たな振り付けが登場します。」
ワジム・レーピン氏
普段からそれぞれが過密スケジュールをこなすレーピン、ザハロワ夫婦に、このプロジェクトはより頻繁に顔を合わせる機会をプレゼントしてくれた。レーピン氏は妻と一緒の作業で二人の間に新たな感情が生まれたと語ってくれた。
『パ・ド・ドゥ』が生まれた当初、私たちは一緒に舞台に上がるつもりは決してなく、むしろできる限りそれに強く反対していました。ですが、ある1人の人物がいて、その女性が文字通り私たちにそれを強要したんです(笑)彼女が説得にかかった期間は1年半でした。彼女はこのプロジェクトは実現するという固定観念を持っており、彼女のおかげで私たちは折れて共演してみることにしました。実際のところ、私たちは共演が気に入りました。一緒に舞台に上がることは何らかの別の愛情や感情を与えてくれるからです。でも、私たちが望むほど頻繁には公演できません。
ワジム・レーピン氏
ワジム・レーピン氏へのインタビューはこちらからお読みいただけます。
トランス=シベリア芸術祭の目玉となったのはスヴェトラーナ・ザハロワ氏がソロを務める舞台『アモーレ』だった。
ここで組み合わされている3つのバレエは、互いに全く似通っていません。観る人は一夜で全く異なる3つのバレエ芸術の世界を味わうことになります。なんと素晴らしいことでしょう。フランチェスカ・ダ・リミニのバレエは音楽が身震いするほど強烈な力を放っています。それにパトリック・ド・バナの沈思するバレエ。これはより哲学的で落ち着いた作品で美しい動きを堪能することができます。3つ目のバレエにはユーモアあり、モーツァルトの素晴らしい音楽あり、しかもこのバレエダンサーらの見事なこと。これは私の今まで見た中で最も興味深いプロジェクトに数えられるものだと思います。
ワジム・レーピン氏
4. 日本の知らないロシア
11月末、「ロシアの季節」は日本人に紹介するロシア芸術を従来の古典的なものに限定せず、今のロシア・カルチャーを見せることを決定。これを受けて11月30日、ロシアの伝説的なロックグループ「ムミー・トローリ」が東京でソロコンサートを行った。

写真:V.Martynenko
「ムミ・トローリ」のリーダーのイリヤ・ラグテンコ氏は長年、極東のウラジオストクに住んでおり、日本の現代音楽の大ファン。自身、長年にわたってロシアの音楽ファンに日本人演奏家を紹介しつづけてきただけに、ラグテンコ氏にとってこの東京でのソロコンサートは非常に大きな出来事となった。 ラグテンコ氏はスプートニクからの独占インタビューに次のように語っている。
『文化外交』というのは、相互理解の達成においては政治的スローガンより格段に効果的な手段だと思うんです。ロシア文科省がこのプロジェクトで古典的なロシア芸術だけでなく、現代の文化的潮流も日本に紹介し始めたことは重要です。とはいえ、伝統的に世界で愛されているロシアのバレエやクラシック音楽の重要性に異議を唱える気は毛頭ありませんが、独立した、現代の非商業的な、首都以外の芸術を他国で紹介するという機会は、世界の全体図の中で自身の場所を探すという見地から非常に重要です。
イリヤ・ラグテンコ氏
写真:V.Martynenko
2017年は露日交流の中ではここに列挙した他にもモスクワのボリショイサーカスの日本公演、ロシアの様々な交響楽団の演奏エルミタージュ美術館の展覧会ロシアのコサック舞踊団など、多くのイベントが展開された。お読みの皆さんの中にもこうした機会に恵まれ、ロシア文化を様々な角度から味わうことができた方がおられるかもしれない。もし今年はチャンスがなかったと言われる方は是非とも来年に期待していただきたい。来年は初の試みで、ロシアにおける日本年、日本におけるロシア年と同時に相互の交流が図られる。スプートニクはこれからも最も興味深いイベントをおい、インタビューを通してロシア文化の担い手たちの肉声を皆さんにお届けし、様々なコンテストを催していきます。どうぞご期待ください。
写真:Museum of Fine Arts of Aichi Prefecture
皆様、どうぞよいお年をお迎えください。そして来年もスプートニクをご愛読くださいますよう、よろしくお願いいたします。
筆者
アナスタシア・フェドトワ

デザイン
アナスタシア・フェドトワ

マルチメディア
Sputnik, ロシアの季節, Museum of Fine Arts of Aichi Prefecture, V.Martynenko, 瀬戸秀美、New National Theatre、Tokyo
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